身土不二という言葉、知ってますか?

2023.03.17

「身土不二」…こちら、まず初見の方は「なんて読むんだろう? 」って思いますよね。「しんどふに」や「しんどふじ」と読みます。読み方が分かったからと言って何を指すものかまでは分からない方がほとんどかもしれません。なかなか古風な言葉ではありますが、食の問題や資本主義経済に辟易している方々の間では再注目を集めている言葉・考え方なんです。その辺りをご紹介していきます。

なぜ、ふたつの読み方があるのか

身土不二と書いて「しんどふに」と「しんどふじ」の読み方がある理由は、簡単に言ってしまえば「しんどふに」は仏教用語で「しんどふじ」が食養運動のスローガンだから…「ん? 」、はい、その反応は正しいです。もう少し紐解いていきます。身土不二の元々の意味としては、「身と土、二つにあらず」。つまり人間の体と人間が暮らす土地は一体であって切っても切れない関係にあるという意味の言葉です。起原は仏典まで遡ることができますが、明治や大正からは食の思想として「その土地のものを食べ、生活するのが良い」という意味で使われはじめました。そのときの読み方が「しんどふじ」であるため、ふたつの呼び方が存在することになりました。

地産地消とも近い教え・考え方

改めてそもそもの仏教用語をもう少し紐解くと、「人と土(ここでの意味は、環境)は一体であり、人の命と健康は食べもので支えられ、食べものは土(環境)が育てている」という考え方のことを指しています。どことなく地産地消とも似ているようですね。言ってみれば、そのものは必要であるためにその土地で生まれた…だから、その土地で食されることが適切である…と読み取れます。その環境に適したその土地の食物をいただくことが、健康な体を育むということでしょう。地産地消との違いは、ビニールハウスで育った季節外れの食物であってもその地域で採れたものを食べれば◎となるところ。身土不二はそうではなく、自然の恵みである点、季節や気候に応じて育ったものはその地、そのときである理由があるから、と考えられているところにあります。

伝統食や旬を重んじる「身土不二」に再注目

似ているようで少し異なる地産地消。この言葉普及した経緯は、塩分過多に陥りやすかった米・味噌汁・漬物という伝統的な食事を見直し、緑黄色野菜や西洋野菜の栽培量を増やそうという動きが影響しています。そんな動きを経た1990年代以降、海外から安価な食材が流入するようになり、消費者自身が食の安全に対する意識に徐々に目覚め始め、地域で生産される地場食材や伝統的な食に目を向けるようになったのです。そして、2000年代はスローフード。昨今の大量生産・大量消費・食の安全性の危惧・健康志向などが相まって身土不二が再注目されるようになりました。
また、韓国でも身土不二(韓国語読みでシントブリ)の概念は広く知られているんです。便利さや手軽さばかりに目を向けるのではなく、そもそもの理由や意味を知ることで健やかさは保たれるということですね。