シリーズでお届けしている世界のゴミシリーズ、今回はモルディブ。どんな国で、どんな状況で、どんなゴミ事情を抱えているのか…容易にイメージできないですよね。さて、実際のところはどうなのか!? 他者から学び、取り入れられるものは取り入れ、活かしていきたいものですね。やはり、ここでも大切なことは、「知る」こと。
「インド洋の真珠」と言われるモルディブの闇
インド洋にある島国・モルディブ。透き通った青い海と白い砂浜の代名詞と言えるリゾート地として世界に知られています。約1,200以上の島々があり、多くがリゾート島で、1島1リゾートとなっているのも特徴的。マリンスポーツを楽しんだり、スパで心身を癒やしたりなど、日本からも観光客が多く訪れています。これらのことから、インド洋の真珠と謳われていますが、島々からなる国であることから、ゴミ問題が特殊なのです。それぞれの島に処理・焼却施設を用意するのは非現実的、ではどうするか? どこかに集約させるしかないですよね。とは言え、「1,200からなる島のゴミをまさかひとつの島に!? 」と思いませんか? そのまさかをモルディブは行っています。その名も「毒の爆弾」と言われるティラフシ島。首都マレの近くにある人工島にてモルディブのほとんどのゴミを廃棄しています。しかし、不適切なゴミ処理問題として、廃棄物は分別されずに集積・燃焼されることが多く、危険な物質が都市ゴミと混ざり、大気汚染や海への汚染を引き起こしているのです。
リゾート島の光と影。日本も協力して改善を目指す
ゴミ埋め立て用の人工島として造成されたティラフシ島では、モルディブ国内から集められた多くのゴミが山積みされ、焼却処分による有毒な煙が立ち上っています。その様子は周りのリゾート島からも確認できるほどのようです。美しい自然と非日常的なリゾートの代表として取り上げられるモルディブの光と、影の部分のティラフシ島の現実は昨今、環境問題のひとつとして世界的に注目を集めています。観光業に依存するモルディブでは、観光客のゴミ排出量は(モルディブを訪れる観光客一人あたりのゴミ排出量)、地元住民の平均と比較して2倍近くと言われています。また、環境への影響としてプラスチックゴミが海に流出し、水質汚染や生態系への悪影響に。これらの問題に対して取り組まれている対策は、プラスチックや鉄くずなどのリサイクル可能な廃棄物を海外に輸出して再利用を促進したり、プラスチックの使用制限を行ったり、海外のNGOとの連携を図って海洋プラスチックゴミを回収する活動も行われています。日本からも無煙焼却炉の供与など、環境に配慮しつつ効率的でもあるゴミ処理技術の導入をサポートしています。
ゴミ問題に加え、さらなる環境問題がモルディブにはある
2019年に太平洋・マリアナ海溝の水深1万mの深海でプラスチックゴミが発見されたと報告されました。このことは、海のプラゴミ汚染の深刻さを物語っています。汚染が進むと、2050年の海は魚類よりもプラゴミの方が多くなってしまうと見込まれています。観光客が生み出すゴミをどうするか? どこで処理するか? 海をきれいなまま残すには? など、ゴミ問題は当然重要な問題ですが、モルディブにはもうひとつ大きな憂い事があります。それは、海面上昇の脅威。モルディブは海抜が非常に低い国、気候変動による海面上昇は喫緊の課題です。また、ゴミ問題と気候変動問題が相互に影響し合い、国全体の存続が危ぶまれています。島の8割が海抜1m以下で、気候変動の影響で2100年までに最大で1m余り海面が上昇すると予測されているため、国土の多くが水没する危機にあります。そして島の97%では、すでに海面が上昇した影響で海岸の浸食が始まっていて、砂浜が浸食されてヤシの木などの根がむき出しになり、あちこちで木が倒れるなどの被害も見られています。政府も対策を進めており、首都マレに近いフルマーレ島(人工島)は、海面上昇に対応するため海抜2mの高さに埋め立てられ、将来的には現在の人口の4割が住めるように人工島の開発を進めています。「所変われば品変わる」と言いますが、それぞれの土地にはそれぞれの問題があるのだと感じながら、どのようにこの問題に立ち向かっていくのか、注目したいと思います。