食品ロスの原因と削減に向けた世界の取り組み
食品ロス(フードロス)とは、まだ食べられるはずなのに捨てられてしまう食品のこと。世界では年間約13億トンもの食品ロスが発生しており、その数字は世界で生産している食料の約1/3に相当します。貧困や紛争など、さまざまな理由で飢餓に苦しむ人がたくさんいるなか、生産された食糧を消費できず廃棄してしまう食品ロスは世界的に問題視されています。
食品ロスはなぜ発生するのか?
食品ロスは飽食状態である先進国の問題だと思っている人もいるかもしれませんが、途上国でも食品ロスは発生しています。ただし、先進国と途上国では食品ロスの発生原因や廃棄されるタイミングが異なります。
途上国の問題
途上国は生産段階や加工段階で食品ロスが発生しています。農業技術が未熟で生産しても収穫しきれず腐ってしまう、保存設備や加工設備、衛生環境が整っておらず、適切に貯蔵・加工ができないのが主な原因です。また、輸送面の問題から上手く市場へ流通させることができず、廃棄されてしまうのも原因のひとつです。
先進国の問題
先進国は加工段階や流通段階、消費段階で多くの食品ロスが発生しています。まず加工段階では野菜や果物などに対して設けられている「外観品質基準」によって、規格外の食品が大量に廃棄されています。そして流通段階では豊富な品揃えを維持するために、小売店が食品在庫を抱え、売り切れない食品が廃棄されています。さらに賞味期限をすぎた食品や余らせた食品、食べ残し、失敗した料理などが消費段階で大量に廃棄されています。
日本における食品ロスの現状
日本では年間約522万トン(令和2年度推計値)もの食品が廃棄されています。そのうち小売店や飲食店から出る事業系食品ロスが275万トン、買いすぎや作りすぎ、食べ残しによる家庭系食品ロスが247万トンです。日本は食品ロス削減に向けて具体的な数値目標を設定し、2019年には「食品ロス削減推進法」という法律も施行されました。余った食品をフードバンク活動団体や地域の福祉施設などに寄付するフードドライブ、売れ残り商品や賞味期限切れ商品の値引き販売など、さまざまな啓蒙活動や努力によって、徐々に廃棄量を減らしていますが、それでも1人あたり、毎日「お茶碗約1杯分」の食べものを捨てているのが現状です。
海外の食品ロス削減の取り組みをご紹介
フランス
2016年に大型スーパーに対して売れ残った食品を廃棄せず、フードバンクや慈善団体への寄付、あるいは飼料やたい肥にすることを義務化する法律「食品廃棄禁止法」を制定。違反すると3750ユーロの罰金が科せられる。
イタリア
2016年に事業者の食品廃棄量削減に対して税制優遇する法律を制定。さらに寄付手続きを簡素化できる仕組みを整え、この法律によって食品寄付が20パーセント以上増加した。
スペイン
地域ごとに「連帯冷蔵庫」と呼ばれる、大型の共有冷蔵庫を設置。余った食材や賞味期限切れの食品などをシェアし、誰でも自由に持ち帰ることができる。
オーストラリア
2017年、シドニーに廃棄予定の食品を集めたスーパーがオープン。食品を扱うさまざまな企業から賞味期限が近付いた食品や売れ残った食品を引き取り販売。購入者は自分で価格を決めることができる。