シリーズでお届けしている世界のゴミシリーズ、今回はこのシリーズはじめてのアフリカの国。どんな国で、どんな状況で、どんなゴミ事情を抱えているのか…容易にイメージできないですよね。さて、実際のところはどうなのか!? 他者から学び、取り入れられるものは取り入れ、活かしていきたいものですね。やはり、ここでも大切なことは、「知る」こと。
そもそもニジェール共和国は、ご存知ですか?
西アフリカに位置する内陸国で、国土の大部分があの有名なサハラ砂漠に覆われている国です。サハラ砂漠のある国、…想像された通り、厳しい自然環境が特徴的となっています。加えて経済状況も不安定。世界で最も貧しい国のひとつと言われています。その一方で、穏やかな国民性を誇っていたり、比較的良好な治安状況を維持していたり、特筆すべき点が多いのもニジェール共和国の特長です。また、豊富なウラン資源や農業、牧畜といった特徴も。世界ゴミシリーズでははじめてのアフリカの国を紹介するとあって、より特徴的な国をピックアップいたしました。ただのアフリカの国ではないんですよ、ニジェール共和国は。砂漠に甘んじているのか? または砂漠を利用・活用しているのか? そのあたりもご紹介できたらと思っています。
家庭ゴミで砂漠を緑化できるってホント!?
サハラ砂漠の南に位置するニジェール共和国では、砂漠化(土地荒廃)の問題が長年深刻となっていました。砂漠化が進行することによって、何が起こるのか? それは、農業生産の低迷、国民の生活レベルの低下、貧困の蔓延、国家財政の破綻が懸念されます。そして、多くの地域で人々の命や生活が脅かされることとなるのです。それを防ぐために立ち上がったのが、京都大学でアフリカ研究を専門にしている大山修一教授たち。教授はまず、現地での農村調査を通して住民の環境認識、自然資源の利用、社会組織などを分析し、問題の解決に取り組みました。分析によると、ニジェールが位置するサヘル地域では干ばつや気候変動の影響を受け、1970年代から砂漠化が大きな問題となっていることが判明。
さらに、ニジェール中南部に居住するハウサの農耕民はもともと屋敷地から畑へゴミを運び、土壌肥沃度と植物生産力の改善を図っていることも明らかに。しかし、市場経済化の影響か、農村においても経済活動が活発となり、農産物を都市部へ販売することによって、農村内部で循環する有機物が減少している現状もわかるように。そこで行ったのが、砂漠への家庭ゴミの散布。
行うのはいたって簡単、都市部から運んできた家庭ゴミを撒く。それだけ? と思うかもしれませんが、新しい家庭ゴミであれば、有害物質が含まれていないことは検査でも判明しているため、家庭ゴミやし尿などは肥料となり、ビニール類は土壌水分の蒸発を防ぐ役割を果たしてくれます。これにより、作物が育つ→家畜を導入→食料と家畜を獲得→家畜の糞尿を肥料に→年々、生育する植物が増加…教授をはじめ研究チームもここまでうまく循環が機能するとは思ってもいなかったほど、改善されていったのです。
成果が生んださらなる好循環
当然ながら、はじめからすべてがうまくいっていたわけではありません。どうやら初期はニジェールの政府や官僚からは期待をされていなかったと教授も話しています。ところが、今ではニジェールの都市ゴミを使った緑化は当たり前に。目に見える成果の積み重ねにより、政府にも理解者が現れ、さらなる連携に向けたプロジェクトの話もいくつかあるようです。さらに、日本をはじめ世界各地でもゴミ問題への関心が高まり。日本の中学・高校の教科書には教授の活動紹介がされるほどに。これらの活動は、単に砂漠の緑化が実現しただけではないのがすごいところなのです。農村部の産業がうまくいかない場合、そこで暮らす人々はうまくいかないことのフラストレーションをテロや戦争に向けがち…(事実、以前の彼らはそうだった)。そんな彼らの悪循環を断ち、ゴミを有効活用し、砂漠も緑化へ導き、農民たちの生活まで安定させることができたプロジェクトは、だから世界から注目を集めたのです。困りごとの解決だけではなく、掛け合わせやしっかりとした研究・分析によって想定以上の成果をもたらすチームにあっぱれ。さらにそれが日本人によるものと知ると、誇りに思えます。