海洋プラスチックごみによる生物への影響

2023.01.10

レジ袋、ストロー、発泡スチロール、ペットボトル、緩衝材、包装資材、日用品、電化製品など、さまざまなところで使われているプラスチック。プラスチックは自由に形状を変えることができ、軽くて使い勝手の良い材料ですが、その利便性から大量に生産・消費・廃棄されるため、排出されるごみの量が多く、海へと流れ込んだプラスチックごみがもたらす生物への影響が問題視されています。今回は海洋プラスチックごみによって生物がどのような被害を受けているのか、どのように生態系が汚染されているのか詳しくご説明します。

 

誤飲などによる直接的影響

プラスチックごみをエサと間違えて摂取したり、プラスチックごみに絡まったりする直接的な影響によって多くの海洋生物が被害を受けています。アザラシ、クジラ、イルカなどの哺乳類、ウミガメ、海鳥、魚類など、多くの海洋生物の胃袋からプラスチックごみが発見されており、絶滅危惧種を含む700種類の海洋生物が傷ついたり、命を落としたりしています。

 

深刻なマイクロプラスチック汚染

海に流出したプラスチックは時間とともに劣化し、細かく砕けてマイクロプラスチック(5mm以下の大きさ)になります。マイクロプラスチックは添加されている有害な化学物質が海中に溶け出し、さらに海洋中の有害な化学物質(PCB、ダイオキシンなど)を吸着し海洋生物に悪影響を及ぼす可能性があります。現段階ではマイクロプラスチックが環境や生物にどのような影響をもたらすかはデータが少なく判断できないと報告されていますが、海洋生物がマイクロプラスチックを食べてしまうと、炎症反応を引き起こしたり、生殖能力が阻害されたり、摂食障害などにつながる場合があることが研究でわかっています。また、食物連鎖を通じて有害な化学物質が生物の体内に蓄積する可能性、そしてそのような魚介類を食べる人体への影響も懸念されています。

海洋プラスチックごみの現状と課題

ポイ捨てされたり、風に飛ばされたり、不適切に処理されたプラスチックごみは水路や川を伝って最終的に海へと流れ込んでいきます。そして細片化したマイクロプラスチックは海水や砂、プランクトンと混ぜ合わさり、取り除くことはほぼ不可能となります。海洋プラスチックごみの汚染は地球規模で広がっており、その量は年間800万トンとも言われています。また、2050年には海洋プラスチックごみの量が海洋の魚の全重量を上回るという推計もあり、各国が積極的かつ迅速に取り組まなければいけない問題となっています。