どの業界、どの企業も時代の流れで事業を転換したり、新しい領域との融合を行ったり、異なる分野へ進出を果たしたりと、市場での立ち位置を確保しようと試行錯誤を繰り返して成長を遂げています。今回紹介するKPPグループホールディングス株式会社も「紙」の領域拡大・融合を遂げている企業のひとつです。
ペーパーレス化の向かい風をどう乗り切るか
世界トップクラスの紙の専門商社であるKPP。その事業内容は、製紙会社から紙を仕入れて販売する「流通」、ユーザーが使った古紙を回収する「リサイクル」も行っています。このリサイクルは質の高さで差別化を図っているようです。社内の熟練した作業員が手作業で不純物を取り除き、その後は紙の種類ごとに選別された古紙をおよそ1tの固まりに圧縮し、コンテナ車に積み込み海外へ輸出。このように丁寧に分別された日本の古紙は、高品質で世界中で需要があります。ところが昨今、紙業界の向かい風となっているペーパーレス化は、KPPにも最大の危機となっています。そのため国内だけではなく、成長する世界市場を取り込もうと海外で子会社化を進め、新分野への事業拡大を進めています。継続は力なり、だけではなく時流を読み、積極的に新しいことに挑戦する姿勢を感じさせる企業のひとつです。
既存にとらわれない積極性
海外子会社化だけにとどまらず、新たな事業にも挑戦しています。そのひとつが、環境にやさしい「紙の人工芝」。これは、プラスチック製の人工芝から発生するマイクロプラスチックが、海洋汚染の主な原因のひとつとなっていることに着目し、その改善のために生み出したもの。和紙からヒントを得て、マニラ麻を原料とし、吸湿性や速乾性を活かして新しい人工芝の可能性を追求した代物。環境に優しく、足元の快適さを実現した優れ物です。紙の糸を使用することで安全性が高まり、熱がこもることなく、熱摩擦による怪我も起こりにくい素材として好評を獲得しています。こういった取り組みは社内整備にもおよんでおり、早い段階から自社ビル屋上の緑化にも着手。都市部のヒートアイランド現象の緩和と、省電力化によるCO2削減を目的とし、さらに菜園を設け、果物や野菜などを育てることを通して、社員の環境貢献の意識向上も目指しています。
社内ベンチャーで循環型ビジネスにも
KPPグループが推進する「総合循環型ビジネスモデル」の一環として、イネ科の穀物「ソルガム」を中心とした農産物を生産し、販売していくと発表を行いました。これは社内ベンチャーとして福島県浪江町で農業を立ち上げ、飼料やバイオマス燃料として、KPP流の循環型ビジネスの実現を目指しています。この活動により、復興支援が今以上に進むことを願い、農業従事者の高齢化や担い手不足の解消を推進。農産物の収穫や耕起などの農作業を請け負うコントラクターとして活動するとともに、福島第一原発事故で農産物の生産を中止せざるを得なくなった地域の営農再開に取り組み、復興支援に貢献していきます。新素材に注目し、新しいを生み出すことで環境に良く、雇用を生み、復興の支援にもなる事業は、注目せざるを得ません。さらに、農畜産業の課題解決とカーボンニュートラルの実現に貢献していくと目を輝かせている方々は、なんとすばらしいのでしょう。