雨が降れば傘をさす。お気に入りの傘を持っている方もいれば、出先で購入したビニール傘を使っている方もいると思います。今ではコンビニでも100均でも気軽に手に入る使い捨て・ビニール傘。これ、どこかに忘れたことありませんか? みなさんも一度はあるかと思います。今回はそんなビニール傘の再活用についてのお話。

サーキュラーエコノミーの一環として「傘to傘」
サーキュラーエコノミーとは、「資源の投入・消費を抑えつつ、製品や資源の価値を長く効率的に活用し、廃棄物を最小限に抑えながら新たな付加価値を創出する経済システム」のことを指します。資源を効率的に循環させ、持続可能な社会の実現を目指し、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取り組みもその手段のひとつとされています。そんな枠組みのなかで今回の「傘to傘」はどんなものか。これは、JR西日本が中心となり、忘れもの傘を再活用していく取り組みのこと。駅や電車で忘れられる傘の数は、近畿エリアだけで月間約9,000本! 当然、なかには廃棄・処分せざるを得ないものもあり、それは産廃となりますが、残りを利用可能な製品に再活用できないか、という着想から進められています。一社だけではなく、JR西日本商事・化粧品メーカーオカモト・平林金属も加わった4社にて行われています。
どんなフローで再活用されるのか
まず、回収された忘れもの傘を平林金属で金属部分とシート部分に分別します。その後、オカモトで樹脂ペレットへ加工し、再生シートに生成していきます。生成された再生シートをJR西日本商事とオカモトの企画・製品化を通して、リサイクル傘へと生まれ変わっていきます。これらのスキームを確保することで、これまでは産廃処分しかできなかったシート部分の再資源化が可能になりました。資源の再活用と経済成長を両立することで、サーキュラーエコノミーの実現に貢献していきます。循環利用することで無駄をなくし、ゴミを減らし、消費者も必要なものを購入・利用できるようになるのです。ついつい、うっかり、気づけば忘れてしまったビニール傘、あの傘はどうなっているのかな? 捨ててもらったのかな? と、疑問に感じたことがあると思います。あの傘は次の役割を与えられて、再び輝いていますよ。
そもそもの着想は、「もったいない」
物に溢れ、便利を追求し、効率化を図ることが常である現代社会。その反面、かえって無駄を生んでいたり、不要なものが増えてしまったりと、豊かさを失っている側面も感じてしまいます。駅や電車内での傘の忘れものもそのひとつと言えるでしょう。JRの利用客の多さを考えれば、膨大な数の忘れものが日々増えていきます。それらを認識すると、「もったいない」という感情を抱くのは当然かもしれません。処理・処分費用を考えれば、再活用や製品化に充てて循環させる方が確かに健全だと思います。何はなくとも、そこにかける情熱や熱量、煩雑な業務をクリアにする企業力がすばらしいです。ユーザーとしての意見を言わせてもらうなら、忘れものをしないように気をつけることを前提に、再活用の循環を知り、活動を知り、その取り組みを応援することをしていきたいなと感じました。