大阪・舞洲にある、万博にも負けないアートなゴミ焼却場

2025.07.04

大阪湾に浮かぶ人工島・舞洲。地域に馴染みのない方の中には「なんと読むのだろう」と思う方もいらっしゃるかもしれません。舞洲で「まいしま」と読みます。その地にある“美しいゴミ焼却場”を今回はご紹介していきます。ゴミなのに美しい、その相反する部分や芸術家がもたらす影響も伝えていきます。

万博開催に伴っておすすめしたいスポットのひとつ

舞洲工場は2001年、環境保護を重んじる芸術家の設計で建てられました。ちなみに正式名称は「大阪広域環境施設組合 舞洲工場」。「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」や水族館「海遊館」など、大阪で人気の観光スポットが近隣にあり、すぐ隣の人工島・夢洲(ゆめしま)は大阪・関西万博の会場でもあります。そんな注目エリアである舞洲の入口に、まるで宮殿のようなカラフルな建物があるのはご存じでしょうか? オーストリアの芸術家・フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー(1928〜2000)によるこのユニークな建築、実はゴミ焼却場です。世界的に著名な芸術家であるフンデルトヴァッサーが手掛けたことや無料開放している点は、あまり知られていない穴場スポットなのでおすすめさせていただきます。

生涯でふたつの焼却場を手掛けたうちのひとつ

1つ目はウィーン市内にある「シュピッテラウゴミ焼却場」、2つ目は日本の舞洲工場。どうしてもネガティブなイメージを持たれやすいゴミ焼却場ではありますが、彼によってもたらされた優れたデザインにより、ゴミ焼却場のイメージが変わることでしょう。何よりも自然の美しさを愛したフンデルトヴァッサーの建築が、舞洲にはあります。「自然界に人工的な直線はない」という考えから、フンデルトヴァッサーの建築には自然と調和する曲線や渦巻き模様が多く取り入れられています。自然と一体化するような曲線的なデザインと火や水をイメージしたカラフルな彩色が特徴の焼却場。地下2階地上7階建て、約1万7,000平米に及ぶ巨大建築には、ゴミの焼却施設と粗大ゴミの破砕施設が備わっており、屋外の緑地と2・3・5階が見学ルートになっています。

自然と共存し、稼働しながらも共生する焼却場

現地を訪れると、遊歩道や緑地、外壁や屋上の緑化など多くの緑が植えられており、自然との共存を目指して建設されたことがわかることでしょう。また、舞洲工場の外観には無数の窓や柱もデザインされています。気づくのは、どれ一つとして同じものがないということ。「自然界には同じ形や色のものは存在しない」というフンデルトヴァッサーの思いが込められています。舞洲工場のコンセプトは「技術・芸術・エコロジーの融和のシンボル」。煙突からはゴミの焼却によって生じる排ガスを適正に処理した上で排出されているそうです。900℃以上の高温で完全燃焼することによりダイオキシンの発生を抑制し、排出基準値1(※)を大幅に下回る数値(0.00015)まで抑え、無害化して放出。見た目だけではなく、性能面もクリアするこの焼却場は、アートとサスティナビリティが一体となった設備と言えます。